「情報を取捨選択し、分かりやすく伝える力を磨くきっかけになった」(模擬国連大会参加 1年生インタビュー)

模擬国連大会参加 1年生

飯塚高校では生徒たちにさまざまな挑戦の機会を用意しています。8月4日(月)〜5日(火)にかけて実施された「第9回全国中高教育模擬国連大会(以下、模擬国連大会)」もそのひとつです。

模擬国連大会では会議ごとに議題が設定され、人権・軍縮・経済・環境・紛争など多岐にわたる国際問題が取り上げられます。国益を背負った各国大使として、事前に作成した政策を軸に議論や交渉、スピーチなどを行う2日間に及ぶ大会です。国際社会の縮図のような議論を通じて、生徒たちは大きな成長を遂げます。

今年は本校から4名の生徒が参加し、そのうち1年1組(特進グローバルコース)の田中凛さんと小林由奈さんにインタビューを実施しました。初めて模擬国連大会に挑戦したふたりに、経験を通じて得た学びを聞きました。

「AIと軍事」テーマでの議論に挑戦

模擬国連大会参加 生徒

――模擬国連大会に参加しようと思ったきっかけは何でしたか。

田中さん:中学生の頃から通っていた英会話教室で、先輩方が模擬国連に参加しているのを知りました。その姿に憧れて「いつか自分も挑戦したい」と思ったのがきっかけです。

小林さん:私も同じ英会話教室に通っていて、先輩から体験談を聞くうちに興味を持ちました。飯塚高校に入学できたので、実際に挑戦してみようと思いました。

――模擬国連大会では、どのような課題に関して、どんな立場から主張をしましたか。

田中さん:今回のテーマは「AIと軍事」でした。私は中国大使を務め、「部分的規制」を支持する立場でした。議論では、全面禁止か部分的禁止かで意見が大きく分かれ、私のチームは「完全に禁止するのではなく、一定の枠組みの中で活用を認めるべき」という主張を展開しました。

ただ、準備の段階で調べきれていない部分も多く、議論の中では知らない単語や専門的な表現が次々と出てきて、理解に苦労することもありました。また、自分の発言が議論の後半になると、それまでの流れを踏まえて内容を調整する必要があり、臨機応変な対応力も求められる場面が多くあるなと感じました。

小林さん:私はオーストラリア大使として「全面禁止」を主張しました。2日間にわたる話し合いの末、最終的には全体として全面禁止で合意が得られました。ただ、議論の進行がとても早く、スピーチの内容を理解しながら自分の意見をまとめるのは大変でした。

また、こちらの主張がそのまま受け入れられるわけではないので、相手にどう伝えれば賛同を得られるのか、どの点を強調すれば効果的なのかを常に考える必要がありました。国と国との間で交渉する感覚を体験できたのは大きな学びであり、まさに交渉スキルを磨く場だったと思います。

準備から本番までで得られた成長

模擬国連大会参加 生徒

――約1ヶ月の準備期間はどのように過ごしましたか。印象に残っていることや成長したと感じたことを教えてください。

田中さん:私は最終的にポスター制作を担当しました。どう配置すれば情報が伝わりやすいか、どのような文章なら分かりやすいかを工夫し、先輩方のポスターも参考にしながら制作しました。限られたスペースに必要な情報を整理して表現するのは難しかったですが、やりがいを感じました。

この準備を通じてリサーチ力が高まったと実感しています。膨大な情報の中から必要なものを選び取り、まとめる力が身についたと思います。情報収集ではChatGPTを使って全体像をつかみ、その後は外務省などの二次情報を確認して裏付けを取る方法を実践しました。この経験は、本番で自信を持って議論に臨む助けになりました。

小林さん:準備期間では、ポスターづくりが特に印象に残っています。どういうレイアウトなら人の目を引けるかを考えるのがとても楽しかったです。

さらに、模擬国連では各国の立場を整理する「PPP(Position & Policy Paper)」を準備する必要があり、その作業を通じて情報の取捨選択や要点を分かりやすくまとめる力がついたと感じています。

――模擬国連大会での経験を学校生活にどのように生かしていますか?

田中さん:模擬国連の準備でChatGPTを使いながら調べ物をした経験が授業にも生きています。分からないことを調べ、そのなかから本当に必要な情報だけを選び取る力がつきました。今では長文を読む際にも「必要な情報」と「不要な情報」を瞬時に判断できるようになり、学習が効率的になりました。

小林さん:PPPの作成などを通じて、まとめる力や必要な情報を見分ける力が身につきました。予習の際にも大切な部分を整理しやすくなり、ノートを取るときも以前より分かりやすくまとめられるようになりました。その結果、復習もしやすくなり、授業全体の理解度が高まったと感じています。

――模擬国連大会に興味を持つ未来の後輩へのアドバイスをお願いします。

田中さん:模擬国連では限られた時間の中で自分の意見を分かりやすく伝える力が求められます。日頃から発表の場で「自分の意思を正確かつ簡潔に伝える」練習をしておくと、本番でも落ち着いて、自分の考えをパッと言葉にできるようになると思います。

小林さん:板書だけでなく、先生の口頭での説明もノートに残す習慣をつけておくとよいです。文章だけでなく、図解的にメモするのもおすすめです。情報をどう整理するかで理解度が大きく変わります。

常に英語が身近にある環境

――福岡県内の高校で模擬国連大会に参加しているのは飯塚高校だけです。おふたりはとても貴重な経験をされましたが、そもそも飯塚高校を選んだ理由は何でしたか?

田中さん:もともと英語が好きで、グローバルな活動に力を入れている学校に進みたいと考えていました。いくつかの学校を見学しましたが、飯塚高校は協定校が多く、留学のチャンスが豊富な点に魅力を感じました。実際にニュージーランドへの留学も経験し、その環境が整っていることを実感しています。

小林さん:先輩方の留学体験を聞いたり写真を見せてもらったりするうちに、現地で学びながらさまざまな体験ができることに惹かれました。英語が得意ではなかったので、この環境で力を伸ばしたいと思い、飯塚高校を選びました。

――最後に、中学生の皆さんにも知ってほしい飯塚高校のグローバル教育のよいところについて、おふたりの視点で教えてください。

田中さん:飯塚高校に来て驚いたのは、交換留学生が頻繁に訪れていることです。日常生活のなかでも自然に英語を使う機会があり、学びの場が授業だけにとどまらない点に感動しました。また、英語の授業はクロフォード先生のようなネイティブスピーカーが担当する機会もあり、常に英語が身近にある環境が整っているのが大きな魅力だと感じています。

小林さん:普通の高校だと英語の授業は2教科程度だと思いますが、飯塚高校では英語のプログラムが充実していて、MITや福岡大学とのコラボ授業、協定校とのオンライン交流など、入学して半年の間にも多彩な経験ができているのがうれしいです。

——詳しく教えていただき、ありがとうございました!

(終)

模擬国連大会に向けて、7月には校外見学も行いました。12日には北九州市立大学で全国模擬国連協会九州支部前期会議を見学し、本格的な議論や各国大使としての振る舞いを学びました。23日には西南大学院の模擬国連サークルを訪問し、大学生から「模擬国連とは何か」という解説や実践的なアドバイスをいただきました。

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どちらの見学でも模擬国連ならではの空気感や進行方法に触れられ、生徒たちにとって大会に向けた大きな学びの機会となりました。

飯塚高校では模擬国連を【国際社会への理解を深め、協働性や主体的な課題解決能力を育む活動】と捉えています。今後も、生徒が実践的にグローバルな知見を得られる機会を積極的に提供していきます。