飯塚高校が大阪・関西万博に出展【産官学民連携「永楽あんぱん」プロジェクト】

産官学民連携「永楽あんぱん」プロジェクト

飯塚高校の放課後英語プログラム「グローバルプログラム・インテンシブ」(以下、グローバル部)に参加する生徒たちが手がけた「永楽あんぱん」が2025年 8月21日(木)、「2025年大阪・関西万博」フランスパビリオンに出展されます。

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永楽あんぱんには、飯塚の老舗「永楽ぜんざい」(昭和20年創業、現在は閉店)の餡が使われています。惜しまれつつ閉店した永楽ぜんざいの味は、飯塚市シルバー人材センター「とまり木」によって受け継がれ、今もぜんざいとお餅のセットが提供されています。

永楽ぜんざいの餡を包むのは、世界20ヶ国に約150店舗を展開する、フランス・パリ発のブーランジェリー「メゾンカイザー」天神店が提供するパン生地です。

飯塚高校×とまり木×メゾンカイザー天神店という、教育機関・自治体・企業・市民が連携する形で月1回程度の企画会議を行い、永楽あんぱんプロジェクトを推進してきました。

永楽あんぱん
永楽あんぱん

飯塚市は江戸時代から「シュガーロード(長崎街道)」の宿場町として栄え、砂糖文化が根づいた「スイーツの町」です。さらに、炭鉱の町として発展するなかで甘味文化が広がり、永楽ぜんざいは地域の人々に長く親しまれてきました。

永楽あんぱんは、その伝統の味を現代に蘇らせ、飯塚の歴史や文化を背景に、地域と世界をつなぐ新たな名物として誕生。

今回は、永楽あんぱんを開発したメンバーの一員である信田桜矢香さん(特進グローバルコース3年生)、笹川大征(特進グローバルコース3年生)さんにインタビューしました。

地域の人たちを巻き込んで生まれた特別なパン

――はじめに「永楽あんぱん」の開発がスタートした経緯を教えてください。
私たちグローバル部はもともと、パンをきっかけに地域を盛り上げる活動をしていました。海外の協定校や飯塚の地元飲食店の協力を得て、世界のパンを販売しながら各国の食文化を伝える「パンパーク」イベントを開催したり、街なか学園祭で地元商店街と連携してパンを販売したりしてきたんです。

自分たちでパンを開発する企画は1年生の頃から構想していて、2024年の街なか学園祭あたりから本格的に動き始めました。そのころ、みんなでいろいろなアイデアを出し合うなかで、あんぱんをつくるのはどうか、と意見がまとまり始めて。

「あんぱんをつくるなら、永楽ぜんざいの餡を使おう」というアイデアが出てから一気に具体化しました。

――その後、自治体・企業・市民を巻き込んでプロジェクトにしていく過程を教えてください。
まず、グローバル部のなかでどう進めるかを話し合いました。パンづくりの知識がない自分たちだけで実現するのは難しいと判断して、メゾンカイザーに製造の一部を依頼することにしました。メゾンカイザーは昨年の街なか学園祭でパンを販売したとき、お世話になっていたんです。

同じく学園祭でコラボしていただいたシルバー人材センター「とまり木」にも協力をお願いし、おばあちゃんたちに試作品をつくっていただくことにしました。

そこから私たち自身も調査を重ねて、少しずつ形にしていきました。地域の大人たちを巻き込みながら進めたことで、特別なパンが生まれたと思います。

手づくりならではのあたたかみも魅力

――すでに連携のあった組織や人に声をかけて、スムーズにプロジェクト化していったんですね。そのプロセスのなかで大変だったこと、面白かったことは何ですか?
やはりパンづくりの知識がないし、つくったこともない分、掲げた理想だけでは進まなくて、コストや味の現実も考えながら、全員の意見をひとつにまとめ上げるのは大変でした。

今回、万博出展にあたって、メディア対応の資料としてレポートをつくるため、飯塚の歴史に詳しい方にお話を聞きに行ったのは楽しかったです。

――企画会議や製造現場の見学もしてきましたね。そういった普段の授業や活動とは異なる経験を通じて何を感じましたか?
高校生の「こんなパンをつくりたい」といった夢や目標を現実化するために、社会経験豊富な大人たちが本気で向き合ってくれたことがありがたかったです。

試作品を初めていただいたときは、見た目も味もクオリティが高くて感動しました。大人たちの熱意と協力に応えたくて、私たちも「絶対に成功させたい」「多くの人に届けたい」と強く思いました。

――ここまで聞いているだけで、永楽あんぱんを食べてみたいなと思わされます。どんなこだわりを詰め込みましたか?
生地はメゾンカイザーさんが永楽ぜんざいの餡に合うように特別につくってくれた、永楽あんぱん専用のものを使っています。

甘みの豊かな餡と少し塩気の効いた生地のバランスが素晴らしくて、甘いものが苦手という先生も試食時に「美味しい!」と感動していたくらいです。

生地に餡を包んで焼き上げ、焼印機(ホットスタンプ)で「永楽」と入れるまでの製造は、シルバー人材センター「とまり木」の皆さんが、すべて手作業で進めています。

手づくりなので、焼き目がつきすぎたり、形や生地の色味にばらつきがあったりもしますが、その違いがあたたかみとして魅力になっています。

永楽あんぱんを通じて飯塚市を知ってほしい

――8月の万博出店についてや今後の展望、目標を教えてください。
出展の機会をいただいた万博会場では、永楽あんぱんをフランス語で「永楽ヴィエノワズリー」と打ち出して、グローバル部のメンバー7人でお客さまをおもてなしします。飯塚市の魅力を伝える自作のポスターも掲示して、一緒にPRする予定です。

国内外からお客さまがいらっしゃると思いますが、特に外国人観光客の方々には「日本の味に挑戦してみませんか?」というアプローチで試食を実施します。試食いただいたお客さまにアンケートを取得予定で、その結果を今後の開発や改善に生かしていくのが楽しみです。

3月1日から2日間、嘉穂劇場でプレ販売を行ったときは、1日200〜300個製造し、大好評のうちに売り切れました。万博会場でも多くの方に試食していただきたいです。

将来的には、新飯塚駅や飯塚駅のお土産コーナーに並ぶくらい有名になって、「これ、私たちが開発に関わったんだよ」と言えるような商品にしたいです。オンライン販売もいつか実現させたいです。

――最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
永楽あんぱんを通して、飯塚市や飯塚高校を知ってもらえたらうれしいです。地域から世界に発信できることを伝えたいです。
飯塚は美味しいお菓子がたくさんある町です。永楽あんぱんもそのひとつとして世界に誇れるものになるようがんばります。

(完)

このプロジェクトは、グローバル部の先輩たちが積み重ねてきた知識と経験を、後輩たちが確かに受け継ぎ、さらに発展させてきた軌跡でもあります。

生徒一人ひとりが「グローバルとローカルのつながり」を自らの視点で捉え直し、学びを深めていくこの取り組みは、飯塚高校が掲げる教育目標GLI(Global・Local・Individual)の理念を体現するものです。

飯塚の魅力を再発見し、地域活性化を目指すとともに、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」にも寄与する挑戦ともいえます。日本遺産に認定されたシュガーロードの魅力を未来へ、そして世界へと伝えていきます。

大阪・関西万博への出展は活動の集大成であり、同時に新たな挑戦の出発点。これからも主体的な学びを重ねながら、飯塚市から生まれた教育モデルを全国へ、さらに世界へと発信していきます。

なお、本プロジェクトに関する取材のご希望がございましたら、お問い合わせください。取材いただけます。

▶お問い合わせ先
Mail:mail@iizuka.ed.jp
TEL:0948-22-6571
FAX:0948-22-6581

※記事内容は取材当時(2025年7月)のものです。

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