「STEAM教育を軸に、高校生の探究力を育むサポートを」(九州工業大学 情報工学府 生命化学情報工学研究系 教授 青木俊介さん)

九州工業大学 情報工学府 生命化学情報工学研究系 教授 青木俊介さん

飯塚高校 特進コースでは、九州工業大学(以下、九工大)情報工学部との連携による特別授業を実施しています。本連携授業では、高校「情報I」の範囲を基礎に、データ分析やシミュレーションといった高度な手法も取り入れた探究学習に取り組みます。

1・2年生の特進混成選抜クラスを対象に、九工大の教授たちによる講義や助言を受けながら、実践的なデータサイエンス教育を進めています。生徒たちは学内外で成果発表を行い、最終的には九工大主催の中高生課題研究発表会を目指します。連携授業をプロデュースする情報工学府 生命化学情報工学研究系 教授で、STEAM教育推進室 室長も務める青木俊介さんにお話を伺いました。

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「飯塚高校と私たち九工大 情報工学部との連携授業は、飯塚高校のDXハイスクール対象授業のひとつです。私たちとしては、地域貢献の一環といった意味合いもあります。嶋田常務理事から高大連携のご提案を受けて、STEAM教育推進室の室長も務める私が、連携授業の体制づくりをすることとなりました。

具体的には、高校生の情報教育を強化したいとのニーズに応え、2024年秋にデータサイエンスの基礎といえる統計学を中心とした授業を、データサイエンス専門の4名の教員と共にスタートさせました。対象となったのは、特進クラスの1年生約16名です。

連携授業には教員に加え、情報の教員免許を取得済、あるいは取得準備中の大学生がTA(ティーチングアシスタント)となって参加し、生徒一人ひとりを手厚くサポートする体制を整えました。

16名を4班に分け、各班に教員1名とTA2名を配置し、生徒4名に対し指導者が3名つき、マンツーマンに近い形で支援することとしました。テスト的に始めた2024年度の授業は秋から春にかけて3日間行い、授業後にアンケートを実施しました。

回答からは、生徒たちのスキルが確実に向上し、また教員やTAとの親和性も高まって、リラックスして学べる環境が整ってきたことが分かりました。スキルの定着については、今後行う探究活動の中で、より具体的な成果として現れてくると考えています。

今年度は、昨年度の1年生(現在の2年生)に対しては探究学習のサポートを、新たな1年生にはデータサイエンスの基礎教育を実施していきます。成果は、サイエンスモールや九工大の中高生課題研究発表会で発表する予定です。

私たちがこの高大連携プロジェクトを進める目的のひとつは、福岡県における情報教育の課題と向き合うためです。「情報教育」と「課題研究の指導・評価」の強化に対応し、STEAM教育を軸に高校生の探究力を育成する仕組みをつくっていきたいのです。また、中長期的には、九工大への入学者、女子学生の理系分野への進学を増やすことも目指しています。

欧米の理工系大学では男女比がおおよそ1対1になっています。しかし、日本ではまだまだ男女比に偏りがあり、特に福岡県や九州地区では、理系に進む女子学生が少ないのが現状です。これを変えていくために、中学生の段階から理系分野へ関心を持ってもらう活動を強化していきたいと考えています。

飯塚高校は私たちと物理的な距離も近く、私学ならではの柔軟性もあり、STEAM教育を軸にしたモデル校として最初に連携をスタートした高校です。特進コースから毎年1〜2名が九工大 情報工学部に進学する流れができればいいなとも考えていて、大学・高校双方にとって持続可能な取り組みを目指しています。

教員たちは、連携授業を通じて、生徒たちがAIを活用したものづくりや仕組みづくりができるようになることを目指しているようです。現行の高校の情報科目の指導要領は、急速に進化するAI技術には追いついていません。

こうした背景のもと、大学の教員が高校生に対し、最先端の知見を直接届けることは大きな意味があると思います。これからも、飯塚高校の皆さんとともに、探究心を育む教育活動を進めてまいります」