【卒業生インタビュー】熊本大学 工学部 情報電気工学科4年 安藤真清さん(2022年3月卒業)

飯塚高校を卒業後、熊本大学工学部 情報電気工学科に進学し、現在4年生の安藤真清さん。高校では吹奏楽部の部長として九州大会出場に導き、大学でも吹奏楽部 副部長として活躍してきました。
大学では研究室でスイスの国際研究機関向けのコンピュータシステムの研究に取り組みながら、熊本大学大学院・九州大学大学院合格を果たし、進学先を検討中です。2026年4月には大学院で新たな研究生活を始めます。
工学部での学び、吹奏楽での挑戦、そして未来への展望――飯塚高校で培った経験を糧に歩み続ける安藤さんにお話を伺いました。
研究や学びに励みながら、吹奏楽部でも活躍
——大学ではどのようなことを学んでいますか?
工学部 情報電気工学科に所属し、情報工学教育プログラムを専攻しています。情報通信技術や電子情報分野を幅広く学び、プログラミングやコンピュータシステムの設計、電気回路や半導体の基礎といった知識を体系的に身につけてきました。中でもプログラミングを中心とした研究に力を入れています。
現在取り組んでいるのは、スイス・ジュネーヴ郊外にあるCERN(欧州合同素粒子原子核研究機構)の大型実験機器に搭載されるコンピュータシステムの開発です。国際的な研究プロジェクトに関わるため、英語で論文やデータシートを読み解いたり、研究室に所属する海外出身のメンバーと議論したりする機会も多くあります。その中で、高校時代に培った国語力や英語力が確実に生きていると実感しています。
——大学生活全般についても伺っていきます。部活動について教えてください。

3年生まで吹奏楽部に所属し、副部長として活動しました。入学当初は吹奏楽とは違う新しい活動に挑戦したいと考えていましたが、体験入部をきっかけに改めて音楽の楽しさを実感し、「やはり続けたい」という気持ちが強まりました。アメフトや競技ダンスなど、大学ならではのサークルにも興味を持ちましたが、中学から高校まで6年間取り組んできた吹奏楽が最も自分にとってなじみやすく、自然な選択だったと思います。
熊本大学の吹奏楽部はサークルではなく部活として活動しているため、一定の責任とコミットが求められます。ただし大学という場である以上、勉学を最優先に考える学生が多く、その中で「どうすれば皆でひとつの目標に向かって活動していけるか」が大きな課題でした。
私は高校時代と同じ熱量を注ぎつつ、一人ひとりと丁寧に向き合い、理解と信頼を積み重ねることを大切にしました。口先だけではなく、まず自ら率先して行動する姿勢を示すことで、仲間との信頼関係を築くよう努めました。こうした経験は、リーダーシップを考えるうえで大きな学びとなったと感じています。
——吹奏楽部での活動において、特に印象に残っていることを教えてください。
最も印象に残っているのは、アンサンブルコンテストに挑戦したときのことです。この大会では、全国大会に進む大学の多くが吹奏楽の強豪として知られる大学であり、勉強を主軸にしている熊本大学が結果を残すのは容易ではありませんでした。
それでも「絶対に負けたくない」という思いで、講師の先生を福岡から招いたり、必要な楽器を借りたりと、やれることはすべてやりました。高校時代に畑中先生からいただいた「やるからには日本一を目指せ」という言葉を思い出し、大学でも「せっかく挑戦するなら一番上を目指す」マインドを持ち続けたのです。
結果的に全国大会には届きませんでしたが、九州大会で2位という成果を収めることができました。あと数点で全国に手が届くところまで力を伸ばせたことは、自分たちの挑戦が決して無駄ではなかった証だと思っています。大切なのは結果そのものではなく、「一番を目指して努力する過程で大きく成長できる」ということ。高校時代に培った姿勢を、大学でも実践できたことが何よりの財産だと感じています。
——熊本大学の環境についても教えてください。
熊本大学の魅力のひとつは、市街地に近い立地にあります。アーケード街「下通・上通」のすぐ近くにキャンパスがあり、平地で移動もしやすいため、授業後に「部活が終わったから遊びに行こう」と気軽に街へ出たり、休日に友人同士で集まって勉強したりと、自然と仲間の輪が広がっていき、充実した学生生活につながっています。大学の近くに住む学生も多く、声をかければすぐ集まれる距離感もよいです。
入試の際には他大学のキャンパスにも足を運びましたが、振り返って感じるのは「熊本大学の立地は本当に恵まれている」ということでした。大学と街が隣り合わせにあるからこそ、人とのつながりをつくりやすい雰囲気があると思います。
また、熊本という地域そのものもユニークです。阿蘇のように自然豊かなエリアは車がないと移動が難しい一方で、中心部には商店街や飲食店が集まり便利に過ごせる一方で、少し足を伸ばせば雄大な自然にも触れられます。都市の便利さと自然の豊かさ、その両方を楽しめるのが熊本大学で学ぶ魅力だと思います。私は熊大に進学した高校の同級生がほとんどいませんでしたが、それでも新しい友人とすぐに親しくなれたのは、この環境のおかげだと感じています。

大学院でさらに力をつけてから社会に出たい
——ここからは未来のお話を伺います。大学院進学を決めたきっかけを教えてください。
入学当初は、学部を卒業したらそのまま就職しようと考えていました。大学院で2年間学ぶよりも、早く社会に出て現場で経験を積んだ方が力になるのではと思っていたからです。特に熊本にはTSMCやその子会社のJASMをはじめ大規模な半導体関連企業が進出していて、将来はそうした企業でキャリアを積むイメージを漠然と描いていました。
転機となったのは、3年生のときに参加したインターンシップです。参加した企業はとても魅力的でしたが、社員の多くが修士以上の学位を持ち、大学院での学びを生かして仕事に取り組んでいました。研究会や学会での発表、論文執筆など、研究で培った力が日常的に求められる環境を目の当たりにし、「大学院に進学してさらに学びを深めることで、社会に出たときにより大きな力を発揮できるのではないか」と考えるようになったのです。
熊本大学では4年生から研究室に所属するため、研究に本格的に取り組める期間は実質1年しかありません。3年間の学びで基礎を固めても、その成果を研究に反映させるには時間が足りないと感じました。
一方で、インターンシップで出会った先輩社員たちは、大学院での2年間を通じて専門性を深め、その力を仕事で存分に発揮していました。その姿に強く影響を受け、「自分も同じように力を養い、社会でより大きな貢献ができる人材になりたい」と思うようになりました。こうした経験を経て、大学院進学を決意しました。
——大学院ではどのような研究をしていく予定ですか?
熊本大学大学院と九州大学大学院の両方に合格していて、どちらに進むかは検討中です。もし熊本大学大学院に進学する場合は、現在取り組んでいるCERN(欧州合同素粒子原子核研究機構)の大型実験機器に搭載するコンピュータシステムの研究を、修士課程の2年間をかけてさらに発展させていくことになります。修士課程ではスイスの現地に赴き、自分たちが開発したシステムが実際に稼働するかをテストできる機会もあり、国際的な研究の最前線で専門性を磨けるのが大きな魅力です。
一方、九州大学大学院では量子コンピュータの研究に挑戦する予定です。量子コンピュータは、これまで私たちが使ってきたパソコンとは仕組みそのものがまったく異なり、大きな可能性を秘めています。九州大学では、その量子コンピュータをどうすれば実際に利用できるのか、どの部分をどのように実装すれば実用化につながるのかといった根本的な課題に向き合っていくことになります。
方向性は異なりますが、いずれも世界的に注目されている最先端分野の研究であり、どちらを選んでも将来に大きくつながると感じています。
吹奏楽部での経験が今に生きている
——ここからは過去の話を振り返っていただきます。飯塚高校を選んだ理由を教えてください。

キャプ:大学でもかっこいい演奏だけでなく、楽しいステージも意識
吹奏楽部に所属していた中学生の頃から飯塚高校吹奏楽部の演奏が大好きで、特にポップスの楽曲や、演奏の最後に披露される楽しいステージに強く憧れを抱いていました。吹奏楽部の部員たちが一体となって楽しそうに、そしてかっこよく演奏する姿は、自分にとって理想そのものでした。
一方で、吹奏楽部はかなりハードな部活です。「勉強との両立ができるだろうか」という不安もありました。入学前に顧問の畑中先生とお話しする機会があり、そのときに「勉強は自分でもできるかもしれないけれど、部活の環境はここにしかない」と言われたのを覚えています。その言葉が大きな決め手となり、「自分は飯塚高校という環境で吹奏楽をがんばりたい」と強く思い、進学を決意しました。
——当時、特進コースを選んだのは、将来は熊本大学のような国立大や難関大を目指したいという思いがあったからでしょうか。
実はその頃、大学進学について明確なイメージは持っていませんでした。「勉強できるに越したことはないだろう。それなら特進に進もう」という比較的軽い気持ちで選んだのが正直なところです。ただ、「部活と勉強の両立だけはやりきろう」と決めて入学しましたし、結果的にハードな環境に身を置いたことで、大きく成長できたと感じています。
——安藤さんの高校時代は、勉強と吹奏楽部が大きな軸になっていたと思います。その中で、特に吹奏楽部での経験から学び、今でも生きていることを教えてください。

「九州吹奏楽コンクール」で毎年のように金賞を受賞している現在の姿からは想像しにくいかもしれませんが、僕が部長を務めていた3年生のときの吹奏楽部は、正直そこまで実力があるチームではありませんでした。このままでは九州大会には到底届かない、という危機感を持っていました。
その状況で部長として意識したのは、一人ひとりに寄り添うことです。自分はパーカッションという打楽器パートでしたが、フルートやトランペットといった別の楽器パートの練習にも加わり、「どうすればもっとよくなるか」を一緒に考えました。
部長だからといって指示だけ出すのではなく、自分も一緒に汗をかきながら練習に参加し、細かい部分をともに調整していく。もし自分が1年生や下級生の立場だったら、上からの指示よりも、一緒に練習してくれる先輩の言葉の方が素直に受け止められると思ったからです。だからこそ、部長という立場を理由に距離を置くのではなく、自分から近づいて一緒に取り組むことを大切にしました。
——自分ごととしてリーダー像を考えて、そこに寄せた在り方をしていたのですね。
リーダーの姿は人によってさまざまだと思います。誰かにとっては、強く引っ張っていくスタイルが合っているかもしれません。私にとっては「一人ひとりに寄り添い、同じ目線で向き合うこと」が一番しっくりきました。
そうして全体の力を少しずつ底上げしていったところ、数年ぶりに九州大会へ出場でき、「努力が結果につながった」と実感することができました。
この経験を通して学んだのは、人は「口だけではない」と思われて初めて信頼を得られるということです。一人ひとりと向き合おうと努め、支え合うことで信頼が生まれ、その積み重ねが結果へと結びつくのだと感じました。大学で副部長を務めたときにも、この姿勢を大切にし続けましたし、これから社会に出てリーダーとして人をまとめる場面があれば、飯塚高校で培ったこの経験を必ず生かしていきたいと思っています。
「自分が変われば、現実も変わる」と気づかせてくれた恩師の教え
——顧問の畑中先生から学んだことで、特に印象に残っていることを教えてください。
高3の4月ごろ、畑中先生に「最近、勉強の調子はどうだ?」と声をかけられたことがありました。当時の自分は「周りより少しできればいいか」くらいの気持ちで、正直そこまで本気で勉強していなかったんです。
すると先生から「それで東大に行けるのか。本気でやるなら一番上を目指せ」と強く言われました。最初は冗談かと思いましたが、「やるなら本気でやれ。環境のせいにするな」と喝を入れられ、その言葉にハッとさせられました。その瞬間、周りと比べてそこそこやればいいという考え方は、自分の成長を妨げるだけだと気づいたのです。
以来、勉強への向き合い方ががらりと変わりました。部活がある日でも空き時間はすべて勉強にあて、移動中や昼食の時間にも物理の問題集を開いて解きました。まとまった時間があるときは誰よりも長く机に向かい、「周囲がどうかは関係ない。現実を変えるには自分が変わるしかない」と思い、使える時間はすべて勉強に費やしました。
もともと「吹奏楽をやりたいから飯塚高校に行こう」と考えていたので、勉強に関しては受け身な部分もありました。でも畑中先生の言葉をきっかけに、「大学進学は自分の努力でつかみ取るものだし、目標は高く掲げるべきだ」と考え方が大きく変わったのです。
「常にトップを目指す意識を持つこと」そして「現実を変えるには自分が変わるしかない」という学びは、今でも自分の思考や行動を支える大きな指針になっています。
——これまで多くの卒業生にお話を伺ってきましたが、安藤さんのように熱い先生とのエピソードを語ってくださる方が本当に多いです。それだけ情熱あふれる先生方が飯塚高校には大勢いるんですね。最後に、飯塚高校に興味のある中学生や保護者の方に向けて、メッセージをお願いします。
飯塚高校の特進コースは少人数制で先生との距離がとても近く、質問や相談を気軽にできる環境が整っています。先生方は形式的な対応ではなく、本音で向き合ってくれる方ばかりで、信頼関係を築きながら学ぶことができたと思います。授業のことはもちろん、時には先生と本気で意見をぶつけ合うこともありましたが、だからこそ自分の考えを深めることができました。
先生方は忙しい中でも質問したときには必ず親身に対応してくれて、適当にあしらわれることは一度もありませんでした。教材も惜しみなく準備していただき、「この環境をどう生かすかは自分次第だ」と常に感じていました。
こうした関係性は卒業後も続いていて、やりとりをしている先生もいます。先生と本音で語り合える経験は、他では得難い財産ですし、飯塚高校に通って本当によかったと心から思います。
後輩の皆さんには、自分の興味を大切にしながらも、高い目標を持って挑戦してほしいと思います。飯塚高校には、その挑戦を支えてくれる先生方と環境があります。この環境を存分に活用して、自分を大きく成長させてください。
——素敵なお話をありがとうございました!
今後も合格者インタビューを不定期で掲載していきますので、どうぞお楽しみに。
※記事内容は取材当時(2025年10月)のものです。
※コース名などは在学当時のものです。
※大学生活・留学生活に関する写真は安藤さんよりご提供いただきました。
▶「探究プロジェクト(特進コース)」について詳しくはこちらを参照ください。