卵から絵具をつくる「テンペラ」の世界を体験【アーティストレジデンス】

卵から絵具をつくる「テンペラ」の世界を体験

飯塚高校が参画する「商店街アーティストレジデンス」プロジェクトの一環として、オーストリア出身のアーティスト、リチャード・ツァイスさんによるワークショップ「テンペラの世界」が、6月25日(木)に飯塚高校で実施されました。

アーティストレジデンスは、新進気鋭のアーティストが地域に滞在しながら創作活動や交流を行い、文化芸術を通じた地域活性化を目指す産学官連携プロジェクトです。

本プロジェクトは、飯塚市商店街で2022年より「街なか学園祭」を開催してきた本校と、飯塚市シルバー人材センター「とまり木」が商店街活性化のために企画したものです。東京藝術大学関係者の支援を受け、飯塚商店街や中心市街地に縁のある企業も加わり、2025年度に始動しました。

その後、飯塚高校を運営する学校法人嶋田学園と飯塚市シルバー人材センターは、教育と福祉の連携を通じて、多世代交流と地域活性化に取り組む活動の総称を「ジェイド飯塚(Jade Iizuka)」と名付けました。商店街アーティストレジデンスも、その活動の一つです。

ジェイド飯塚では、高校生の若い力や新しい発想と、シルバー人材センター会員の経験や技能、地域とのつながりを生かし、世代を超えて学び合いながら、飯塚のまちに新たな価値を生み出すことを目指しています。

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数か月ごとに招かれるアーティストが約1か月間滞在し、アートの力で飯塚市商店街を活性化させるこのプロジェクトには、インバウンドをはじめとする地域活性化の効果も期待されています。生徒たちは、プロのアーティストとの対話や体験を通じて、創造力や表現力を育んでいます。

世界各地で活動するツァイスさんが飯塚へ

今回ワークショップを行ったツァイスさんは、オーストリア・ウィーン出身で、現在はイギリスを拠点に活動する現代美術家です。

絵画をはじめ、映像、インスタレーション、文章など、さまざまな手法を用いて制作しています。作品を通して、私たちが物事をどのように見て、受け取っているのかを探究しています。

これまでオーストリア、デンマーク、イギリスをはじめ、さまざまな国で作品を発表。2019年にはナイジェリアで開催された「ラゴス・ビエンナーレ」に参加したほか、福島県で撮影した素材をもとに短編映画『双葉物語(Futaba Story)』を制作するなど、日本でも活動しています。

飯塚での滞在制作では、嘉穂劇場の関連施設から出た廃材を活用し、新たなアート作品を制作しました。

エッグテンペラについて説明するツァイスさん
エッグテンペラについて説明するツァイスさん

英語で学び、テンペラに挑戦

生徒たちが体験したのは、ツァイスさんの制作にも用いられている「テンペラ」という技法です。

テンペラとは、顔料と卵を混ぜて絵具をつくり、その絵具で描く技法です。油絵具が広く普及する以前のヨーロッパで、板絵などに広く用いられてきました。

ワークショップには、飯塚高校で地域活動の企画・運営を行う組織「まちLabo」と、グローバル研究部の生徒たちが参加しました。

生徒たちは、ツァイスさんの英語による説明を聞き、通訳のサポートも受けながら、エッグテンペラの特徴や絵具のつくり方を学びました。

生徒たちは、卵やごま油、粉末状の顔料を混ぜ、自分たちの手で絵具をつくるところからスタート。色の混ざり方や絵具の感触を確かめながら、画用紙に自由に線や形を描いていきました。

制作の様子

普段は食材として身近な卵から絵具ができていく過程に、生徒たちも興味を引かれた様子でした。2年2組の眞子秀雅さんは、「卵が、食べること以外にも使われていることに驚きました。制作も楽しかったです」と振り返ります。

はじめは卵を使って描くことに少し戸惑いを感じていたという、2年1組の原田佳音里さん。しかし、材料を混ぜて絵具をつくるうちに夢中になり、「描き方にも工程があって興味深く、すごく楽しめました」と話しました。

2年2組の今村心郁さんも、「初めて知った描き方でしたが、楽しく活動でき、個性的な絵を描くことができました」と、テンペラならではの制作を楽しんだ様子でした。

色を重ねることで生まれる変化も、生徒たちにとって新鮮な発見となりました。2年1組の田中凛さんは、「最初は白だけだった作品に赤や緑を重ねることで、鮮やかでとてもきれいな作品になり、びっくりしました」と振り返ります。

また、2年1組の小林由奈さんは、「オーストリア出身のアーティストに来ていただき、これまで知らなかった伝統的な絵画技法を実際に体験できました。他の国の文化を学ぶことができ、勉強になりました」と話しました。

自分たちの手で絵具をつくる体験を通じて、生徒たちは、市販の絵具を使うだけでは分からない、素材から表現が生まれていく過程に触れました。

ツァイスさんは、作品の題材や技法について英語で生徒たちに語りかけました。まちLaboの生徒たちも、知っている英単語や身振りを交えながら、積極的にコミュニケーションを取ろうとしていました。

すべてをすぐに理解できなくても、相手の話に耳を傾け、自分の思いを伝えようとすることも、異なる文化や価値観に触れるうえで大切な学びです。

自分でつくった絵具を使い、自由に表現している
自分でつくった絵具を使い、自由に表現する

海外を拠点に活動するアーティストと直接交流し、ツァイスさん自身が制作に用いる技法を体験した今回のワークショップは、生徒たちにとって、芸術と英語の両面から新しい世界に触れる機会となりました。

完成した絵具

地域と芸術を結ぶアーティストレジデンスは、生徒たちに新たな学びと気づきをもたらしています。飯塚高校では、今後もこうした取り組みを通じて、地域社会と連携した教育活動を推進してまいります。

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まちLaboとは

「まちLabo」は、本校の教育目標GLI(Global・Local・Individual)に基づき、地域活動を生徒主体で企画・運営する団体です。

2025年度から本格的に活動をスタートし、現在は本校の地域連携活動を担う団体として、本町商店街・東町商店街をはじめとする地域の方々と連携しながら、商店街の活性化やSDGsにつながるテーマに取り組んでいます。こうした実践を通じて、生徒たちが企画力や運営力を高めることを目指しています。

発足後、活動を重ねる中で地域とのつながりも広がり、2025年7月からは土曜マルシェの企画・運営にも継続的に協力しています。さらに、これまでの経験を2025年11月の学園祭にも生かし、イベントを成功へとつなげました。

これらの取り組みを通じて、生徒たちは実践的にイベント運営のノウハウを学び、将来的には地域イベントでリーダーシップを発揮できる人材へと成長することを目指しています。

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