英語・探究・教育医療の授業でプレゼン。探究プロジェクトで育む「伝える力」

飯塚高校では、2026年度から特進コースを一新し、「学術探究」「国際探究」「ビジネス探究」「公共探究」という4つの探究プロジェクトを展開しています。
今回は、そのうち学術探究プロジェクト・国際探究プロジェクトの生徒が共通して履修している学校設定科目「IE1」、ビジネス探究プロジェクトの「探究基礎」、公共探究プロジェクトの「教育医療基礎」に注目します。
扱うテーマや授業の進め方はそれぞれ異なりますが、3科目に共通しているのは、知識を得るだけでなく、自ら調べ、考え、形にし、相手へ伝えるところまで実践すること。夏休み前には、これまでの学びを生かしたプレゼンテーションが各科目で行われました。
それぞれのプロジェクトで、生徒たちは何を学び、どのような力を育んでいるのでしょうか。プレゼンテーションの内容や生徒たちの成長とともに、3つの授業の特色を紹介します。中学生や保護者の皆さまにも、プロジェクト選択の参考としてぜひご覧ください。
学術探究・国際探究「IE1」|世界に目を向け、自分の考えを英語で伝える
2026年度の「IE1」は、学術探究プロジェクトと国際探究プロジェクトの生徒が共通して履修する学校設定科目です。英語の「読む・書く・聞く・話す(やりとり・プレゼンテーション)」という4技能5領域をバランスよく育て、実践的な英語運用能力を身につけることを目指しています。
授業は、ネイティブ教員によるオールイングリッシュが中心です。アニメ『スポンジ・ボブ』を使ったディクテーションや英検形式のライティング、映画『ターミナル』を題材にした学習など、さまざまな教材を通して、生きた英語に触れてきました。
教室の外や海外との交流にも学びを広げています。JICA九州では、参加者が国ごとの立場に分かれ、交渉や取引を通して世界の経済格差などを体験的に考える「貿易ゲーム」に挑戦。タイの協定校とのオンライン交流では、英語を使って自己紹介や学校紹介を行い、互いに質問を交わしました。
こうした経験を重ねた生徒たちが、今回取り組んだのが「世界の料理」をテーマにした英語プレゼンテーションです。
生徒はそれぞれ料理を一つ選び、その名前の語源やルーツ、材料、作り方などを調査。聞き手が内容を理解しやすいよう、話の流れを示す英語表現や、写真、イラストの使い方も工夫しました。
今回の発表には、「スライドに長い英文を書き、それを読み上げるだけにしない」というルールが設けられました。必要な情報はキーワードや写真で示し、詳しい内容は自分の言葉で説明します。生徒たちにとっては、英文を正しく作るだけでなく、発音やイントネーション、言葉の強弱、ジェスチャー、アイコンタクトなども意識しながら、英語で相手へ伝える実践の場となりました。
発表当日は、最初に6〜7人のグループに分かれて予選を実施。司会進行、集計、タイムキーパーなども生徒が担い、互いの発表を20点満点で評価しました。各グループを勝ち抜いた5人は、全員の前で行われる決勝へ進み、教員による審査を受けました。
決勝で優勝したのが、権田和花さんによる「ポトフ」の発表です。料理の紹介にとどまらず、ポトフという言葉の語源まで調べていた点や、写真、ジェスチャーを生かした伝え方など、全体を通して完成度の高いプレゼンテーションとなりました。
また、2位には「ポークアドボ」を発表したバニャ・リアン・ガブリエルさん、3位には「プレッツェル」の宮岡雫さん、4位には「サムギョプサル」の宮﨑永煌さん、5位には「ボルシチ」の渡邊龍星さんが選ばれました。それぞれが調査した内容や写真を生かしながら、自分なりの工夫を凝らした発表を披露しました。

以前はメモを読み上げることに精いっぱいだった生徒が、内容をしっかりと頭に入れ、聞き手とアイコンタクトを取りながら堂々と発表する姿も見られました。直前まで友人に発表を見てもらい、改善を重ねた結果、予選を勝ち抜いた生徒もいます。
発表をする力だけでなく、ほかの生徒の発表を真剣に聞き、そのよさを公正に評価する力も育っています。JICA九州での活動や協定校との交流など、これまでの経験が今回のスムーズな進行や積極的な姿勢にもつながりました。
今後も、ニュージーランドや韓国の協定校とのオンライン交流、プレゼンテーション、ディベートなど、英語によるアウトプットを中心とした活動を続けていく予定です。
ビジネス探究「探究基礎」|身近な困りごとから、新しい商品を生み出す
「探究基礎」は、自分の好きなことや関心のある分野、部活動などに目を向け、そこにある課題を自分たちで解決していくための考え方を学ぶ科目です。大切にしているのは、「自分にも課題を解決できる」と考え、まず行動してみることです。
夏休み前までの授業では、まず自分の「好きなこと」「苦手なこと」「気になること」を振り返り、自分が探究したいテーマを考えました。そこから、興味や関心を具体的な「問い」に変え、その答えについて仮説を立て、実際に小さな行動を起こして確かめるという探究の基本的な流れを学んできました。
行動して終わるのではなく、得られた事実をもとに結果を整理・分析し、うまくいかなかった点を振り返って、仮説や行動計画を見直すことも大切にしています。短期間の行動や習慣化にも挑戦しながら、「問いを立てる、試してみる、振り返る、次の行動につなげる」という探究のサイクルを実践してきました。
今回の授業では、こうした学びを生かし、「身近な課題を解決する商品」を考え、商品の魅力を伝えるLP(ランディングページ)の設計とプレゼンテーションに取り組みました。
商品を考える際には、「誰に届けるのか」を具体的に設定します。部活動が忙しく、十分な栄養を取る時間がない高校生、仕事や家事に追われる社会人や保護者など、商品を必要とする人物像を思い描き、その人が抱える困りごとや、商品によって届けられる価値についてグループで話し合いました。
生徒たちが特に苦労したのは、すでにある商品との違いをどのように生み出すかということでした。
例えば、「手軽に栄養を補給したい」という課題に対しても、すでに栄養補助食品やゼリー飲料があります。そこで、「口の中がパサつきにくく、ゼリー飲料よりも満足感のある食品とは何だろう」と、さらに問いを掘り下げました。インターネットや生成AIもアイデア出しに活用しながら、出てきた案をそのまま使うのではなく、自分たちで検討し、よりよい仮説へと磨き上げていきました。
発表された商品の一つが、「住岡株式会社」グループの考案した「全自動料理マシン」です。

「全自動コーヒーマシンがあるのなら、全自動で料理を作ってくれる機械があってもよいのではないか」という発想から生まれました。忙しい会社員や共働きの家庭を主な対象とし、商品の機能だけでなく、Instagramのアカウントをフォローすると10%割引になる販売戦略まで考えられていました。

もう一つのユニークな商品が、「ペン工場」グループによる「パルスペン」です。これは、一定の間隔で刺激を与え、眠気を覚ますという発想から考案されたペンです。
吹奏楽部の練習で帰宅が遅くなり、授業中につい眠ってしまうことがあるという生徒自身の悩みから、「さりげなく眠気を覚ませるものがあったら」というアイデアが生まれました。身近な実体験を課題として捉え、解決策を商品へと発展させた着眼点が光る提案です。
商品設計では、自分が作りたいものを考えるだけでなく、それを使う人の立場へ視点を移す必要があります。また、同じ商品でも、言葉の選び方や話し方によって相手に伝わる魅力は変わります。
今回の活動は、柔軟な発想や独自の視点を養うとともに、これまで学んできた「問いを立てる」「仮説を考える」「行動する」「結果を検証する」という探究の流れを、商品設計を通して実践する機会となりました。
夏休みには、生徒一人ひとりが自分の探究テーマに沿って、実際に取り組める行動を計画しました。夏休み前までに身につけた探究のサイクルを生かし、自ら立てた問いを具体的な行動と検証へつなげていきます。
公共探究「教育医療基礎」|人を支える仕事を知り、相手の目線で考える
「教育医療基礎」では、教育や医療をはじめとする「人に関わる仕事」について、体験を交えながら学んでいます。
授業ではまず、人に関わる仕事にはどのような共通点があるのかを考えました。教育や医療、福祉などの現場では、一つの職種だけであらゆる問題を解決するとは限りません。複雑な「困った」に向き合うため、異なる専門性を持った人たちがチームで連携し、一人の人を支える「多職種連携」についても学びました。
その後、学びのテーマを「乳幼児の遊びと安全」へと広げました。
乳幼児の遊びは、心身の発達に大切な役割を果たします。一方で、体の大きさやできることは年齢によって異なるため、大人と同じ感覚で遊具を作ることはできません。生徒たちは、子どもの興味を引きながら安全に遊べるものを目指し、グループごとにダンボールを使った遊具制作に取り組みました。
「この高さなら手が届くだろうか」「どのような仕掛けなら興味を持つだろうか」「角にぶつかっても危なくないだろうか」と、常に子どもの目線に立って考えます。
制作の過程で大きな課題となったのは、安全面への配慮でした。角を丸くする、小さく外れやすい部品を使わない、遊んでも壊れにくい構造にするなど、楽しさだけでなく、事故につながる可能性を一つずつ想像しながら改善を重ねました。
思ったように仕掛けが動かない、ダンボールの強度が足りないといった問題も生じます。そのたびにグループで意見を出し合い、役割を分担しながら、一つの作品として完成させていきました。
完成後は、作品の対象年齢や制作の目的、発達との関係、工夫した点、安全のために配慮したことなどをスライドにまとめ、プレゼンテーションを行いました。
なかでも今回の取り組みを伝える作品として紹介されたのが、3班の「3歳から4歳が没頭するすべり台」と、4班の「みんなで遊ぼう冷蔵庫」です。
3班は、好奇心が旺盛になり、運動能力も発達していく3〜4歳児を対象に、ダンボール製のすべり台を制作しました。

階段を上ることで脚力やバランス感覚を育み、滑る動作によって体の使い方や姿勢のコントロールを学べるのではないかと考えたものです。また、単に滑るだけでなく、ごっこ遊びの舞台にしたり、上から景色を眺めたりすることで、想像力を使った遊びにも発展させられる点に着目しました。
制作で特に重視したのが、子どもが安全に遊べる強度です。すべり台の土台には多くのダンボールを敷き詰め、高校生が実際に滑っても壊れないほど頑丈な構造を目指しました。
さらに、転落やけがのリスクを減らすため、傾斜を急にしすぎない、滑る面をなめらかにする、角を丸くするといった工夫も施しました。試行錯誤を重ねるなかで、生徒たちは、乳幼児向けの遊具には、細かな安全への配慮が必要であることを実感しました。
一方、4班の「みんなで遊ぼう冷蔵庫」は、2歳から6歳までの子どもが、ごっこ遊びを通して成長できることを目指した作品です。

幼い頃のごっこ遊びや大人のまねは、想像力や表現力を働かせ、人との関わり方を学ぶ機会になります。生徒たちは、冷蔵庫を使った遊びを通して、子どもたちに料理や家事への興味を持ってもらい、「家でもお手伝いをしてみたい」という気持ちにつなげたいと考えました。
子どもが思わず触ってみたくなる大きさや、実際に使ってみたくなる仕掛けを意識し、扉を開け閉めできる構造にしました。しかし、ダンボールで扉をなめらかに開閉させるのは難しく、完成までに4回ほど作り直したといいます。
安全性と使いやすさにも、細かな工夫が施されています。取っ手は、子どもの手でも握りやすく、先端が尖らない筒状にしました。紙の縁など手を切る可能性がある部分にはセロハンテープを貼り、上下2段の本体が倒れないよう、ボンドやテープで固定しています。冷蔵庫の中に入れる牛乳パックも、子どもが手に取りやすい大きさで制作しました。
生徒たちは、自分が幼かった頃を思い出しながら、「小さな子どもならどう感じるだろう」「どのくらいの大きさなら触りたくなるだろう」と、子どもの立場に立って考えました。作品の見た目や楽しさだけでなく、発達との関係や安全性、使いやすさまで検討したことが、両グループの発表から伝わります。
この活動は、教室内の発表だけで終わりません。6月下旬には、完成した遊具を「街なか子育て広場」へ寄贈し、実際に子どもたちと一緒に遊ぶ機会も設けられました。
自分たちが考えた仕掛けに子どもたちは興味を持つのか。安全に、思い描いたとおりに遊んでもらえるのか。実際の反応を間近で見ることで、生徒たちは子どもの遊びや発達について、制作時とは異なる角度から学ぶことができました。
今回の活動を通して育まれたのは、相手の発達段階や立場を想像する力、安全に配慮する力、問題を見つけて改善する力、仲間と協働する力など、人と関わる仕事に必要となる多様な力です。
今後は、小児医療に関する出前授業をはじめ、普通救命講習、多文化共生、ヒューマンサービスに携わる方々の講話なども活動の候補として検討されています。水分のとろみ付けや嚥下食・離乳食の試食、授乳、着替え、応急手当など、医療、福祉、保育、家庭看護につながる体験的な学びも構想されています。
題材の異なる3科目に共通する学び
英語で世界の料理を紹介した「IE1」、身近な課題を解決する商品を考えた「探究基礎」、乳幼児が安全に楽しめる遊具を制作した「教育医療基礎」。
扱った題材は異なりますが、どの授業でも、生徒たちは自ら調べ、仲間と考え、アイデアを形にし、それを相手へ伝える経験を重ねました。
プレゼンテーションは、学んだことを発表するだけの場ではありません。どのようにすれば相手に伝わるのかを考えることで、自分たちの理解やアイデアをさらに深める機会でもあります。
それぞれの探究プロジェクトの特色につながる学校設定科目を通して、生徒たちは自分の関心や将来の可能性を広げながら、これからの学びに必要となる力を育んでいます。
(取材協力/IE1 石丸真子先生、探究基礎 武下友学先生、教育医療基礎 小野葵先生)

