「まちが元気であること」が、教育と福祉を支えていく――ジェイド飯塚が目指すもの【対談 前編】

対談の様子

飯塚市シルバー人材センターと学校法人嶋田学園は2026年6月21日、多世代交流と地域活性化を目的とした連携協定を締結し、両団体の協力活動の総称を「ジェイド飯塚(Jade Iizuka)」と名付けました。

街なか学園祭でのコラボレーションから深まり始めた交流は、なぜ今、正式な協定という形を得たのか。飯塚市シルバー人材センター 常務理事の山上紀彦さんと学校法人嶋田学園 飯塚高校 常務理事/校長補佐・嶋田吉朗(以下、敬称略)が、その背景にある経緯と、目指すべき方向性を語り合いました。

プロフィール

山上 紀彦(やまがみ のりひこ)
飯塚市シルバー人材センター 常務理事/事務局長(2022年9月就任)。高齢者の就業機会の確保・提供、地域社会への参加促進に取り組みながら、嶋田学園との多世代交流プロジェクトを牽引する。2023年から商店街空き店舗再生や国内外から芸術家を招聘し、2025年よりアーティスト・イン・レジデンス事業を展開。

嶋田 吉朗(しまだ きちろう)
学校法人嶋田学園 常務理事、飯塚高等学校 校長補佐。認定こども園 愛宕幼稚園園長。ICT・グローバル教育・地域連携・大学連携等を統括。「ヲソラホンマチ」を中心に飯塚市の旧市街活性化に従事し、本校の「街なか学園祭」を主導。社会学者としても活動し、関西大学客員教授および経済・政治研究所非常勤研究員。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会学)。主著に『地方経済人の結社と市民社会』(大学教育出版、2023年、日本NPO学会賞奨励賞を受賞)。

「ジェイド」に込めた、二つの色が出会う意味

「ジェイド」とは翡翠(ひすい)を意味する言葉です。高齢者の経験や知恵を表す「シルバー」と、若者の生命力や未来を表す「グリーン」――この二つの色が出会い、つながることで、新たな価値と輝きが生まれてほしいという願いが込められています。

嶋田 吉朗(学校法人嶋田学園 常務理事、飯塚高等学校 校長補佐)
嶋田 吉朗(学校法人嶋田学園 常務理事、飯塚高等学校 校長補佐)


――お二人は、この「ジェイド飯塚」という取り組みを、それぞれどのように捉えていますか。

嶋田:私はジェイド飯塚を、教育と福祉が組み合わさることで、お互いの分野を高め合うだけでなく、地域全体を活性化していく取り組みだと捉えています。

山上:私は、嶋田さんがおっしゃった教育と福祉に、私たちが嶋田学園さんと一緒に継承してきた芸術・文化の面、そして地域課題に取り組んでいく部分を重ねて、「福祉・教育・文化・地域」という四つを紡いでいく取り組みだと捉えています。

――その「福祉・教育・文化・地域」を紡いでいく先に、ジェイド飯塚では「0歳から100歳までが自然につながり、互いに学び、支え合うまち」という言葉も掲げています。これは具体的にどのような状態を思い描いているのでしょうか。

山上:思い描いているのは、嶋田学園さんの生徒や園児たちを含めた若年層から、私たちシルバー人材センターのシニア層まで、世代を問わず自然に行き来し、支え合っている状態です。そうした循環が地域の中で当たり前になっている――そんな地域のモデルケースを、私は「0歳から100歳まで」という言葉で表現しています。

嶋田:私がイメージするのは、街なか学園祭のような自然な出会いが、まちのあちこちで当たり前に起きている状態です。そうした接点は現代社会ではなかなか生まれませんが、出会い、つながる場さえあれば、一人では成し得ないことが次々に実現していきます。少子化が進む中でも、質の高いつながりによって地域全体が元気になっていく――この「0歳から100歳」という言葉には、そんな状態への思いが込められているのだと思います。

もっと大きな力で、まちを動かすために

対談の様子

――これまでも嶋田学園とシルバー人材センターによる交流はありました。なぜ今、連携協定という形で、個別の活動を「ジェイド飯塚」として束ねる必要があったのでしょうか。

山上:嶋田学園さんとは、4年ほど前から、さまざまな取り組みを一緒にさせていただいてきました。地域活動に主体的に取り組む姿勢に強く共感しながら、嶋田さんといろいろとお話をさせていただく中で、点だったものが線になってきている実感がありました。ただ、行事もイベントも含めて、それぞれの取り組みが担当者レベルで終わっているものもあった。次の段階として、線を面に変えていくためには、一つの組織としてまとまることが重要だったのだと思います。

嶋田:山上さんがおっしゃったように、地方都市が共通して抱える人口減少や高齢化に、自分たちの手でどう向き合っていくか。それも、今この面をつくる大きな理由です。教育のため、高齢者の生きがいのためにと活動を重ねてきましたが、それを本当に意味のあるものにするには、まち全体が元気であることが欠かせません。だからこそ、一つひとつの活動を散発的なものにとどめず、まちを動かせるだけのパワーに変えていきたいと感じていました。これは、山上さんも私も、このまちへの思い入れが強いからこそだと思います。

山上:だからこそ、私たち自身が主体的に動いていく必要があると思っています。嶋田学園さんとご一緒したいと思った一番の理由は、やると決めたことを必ず実行していく、圧倒的な本気度です。我々が共感し、尊敬しているところです。

嶋田:逆に私たちから見ても、シルバー人材センターさんは、私たちの教育を強力に支えてくださっており、同時に商店街や飯塚の街を本当に盛り上げてくださっている、貴重な存在です。まさに有言実行という点で、お互いに一致したのだと感じています。

二つの団体だからこそ生まれる「巻き込む力」

山上 紀彦さん(飯塚市シルバー人材センター 常務理事/事務局長)
山上 紀彦さん(飯塚市シルバー人材センター 常務理事/事務局長)

――「ジェイド飯塚」と名付けて組織化することで、これまでとは何が変わるのでしょうか。

山上:ジェイド飯塚を作った目的の一つは、いろいろな団体さんに参加していただきたいということです。教育や福祉に関わらず、地域の主要な団体さんや住民の方も含めて、多様な方が参加できる組織を目指しています。皆さんが持っていらっしゃるポテンシャルを、ジェイド飯塚で発揮していただきたいと思っていて、私たち二団体だけで完結させようとは思っていません。

嶋田:こうしてユニットとして名付け、組織化することは、逆に言えば私たちだけでは終わらない、巻き込む力を想定してのことです。個別の取り組みで参加者の満足度が高まればいい、という考え方もあります。しかし、それを超えるインパクトを生み出すには、規模も含めて大きくしていく必要があるでしょう。私たちは両方とも公益法人で、公的な大義を実現したいという思いがあります。その説得力は、この二つの団体だからこそ持てるものであり、その方向性のもとで民間企業にも入ってきていただきたいと考えています。

山上:ユニットとして活動する中で、周囲に対して、自分たちが地域創生のプログラムに取り組んでいるのだと伝えやすくなった点も大きいです。それによって、こちらから協力をお願いしやすくなりました。まだ始まったばかりですが、これをきっかけに、周囲の方から声をかけていただけるような関係も少しずつ生まれてくるのではないかと感じています。

嶋田:そこは大きな意味を持っていると思います。学園祭のような取り組みをしていても、「結局は学校の活動でしょう」「そこまでしなくても十分ではないか」と受け止められることがあります。でも、そうではないと思うのです。まちを良くしていくことは、生徒の将来や、日々の生活の質、学びの質にも関わってきます。なんとなく良くなった気がするという自己満足で終わる教育効果と、まちが本当にダイナミックに動くことに携わる教育効果とでは、まったく違うと思うのです。本当の意味での地域創生をやっていくには、学校というスケール感だけでは難しい。そこに実質的なパワーが生まれてくることを、今回の組織化、この面をつくっていく取り組みの中で期待しています。

「ジェイド飯塚」という名前と組織を得て、新たなステージへと進もうとしているシルバー人材センターと嶋田学園。後編では、この取り組みが高校生や高齢者、そして地域にどのような価値をもたらすのか、そしてジェイド飯塚がこれから目指す未来について、お二人にさらに語っていただきます。

ジェイド飯塚に関心をお持ちの皆さまへ

ジェイド飯塚では、世代を超えた交流や、教育と福祉が連携する地域づくりに関心をお持ちの企業・団体・地域の皆さまとのつながりを、これから広げていきたいと考えています。専門的な知識や技術を生かした共同企画、活動場所の提供、高校生・高齢者との商品開発やイベントへの協力など、関わり方はさまざまです。少しでも関心をお持ちでしたら、「一緒に取り組んでみたい」「自分たちにできることを相談・提案したい」という形で、下記までお気軽にお問い合わせください。


(お問い合わせ先)
学校法人嶋田学園 飯塚高等学校
〒820-0003 福岡県飯塚市立岩1224
TEL:0948-22-6571
Mail:mail@iizuka.ed.jp

これまでの活動や、ジェイド飯塚が目指す姿について、より詳しくは「ジェイド飯塚 特設ページ」をご覧ください。

※本対談は2026年7月21日に実施されたものです。