「まち全体が一つのホテルに」地域活動特別講演会で、街なか学園祭へのヒントを学びました

地域活動特別講演会

飯塚市文化会館イイヅカコスモスコモンで9月30日(水)、地域活動特別講演会を開催しました。11月21日(土)に控える「街なか学園祭」を前に、まちづくりの専門家の話を聞くことで、まちにどう働きかけていけるか、飯塚のまちが将来どうなっていくべきかを生徒一人ひとりが思い描けるようにしたいという思いから企画したものです。

本校が掲げるGLI(グローバル・ローカル・インディビジュアル)のうち、「Local」の学びを実践につなげる機会と位置づけています。講師には、全国34か所(2026年9月30日時点)で地域の再生に取り組み、まちに活気を取り戻してきた株式会社NOTE代表取締役の藤原岳史さんをお招きしました。

嶋田吉朗常務理事・校長補佐(右)
嶋田吉朗常務理事・校長補佐(右)


講演に先立ち、生徒会が飯塚山笠への参加や商店街での10時間耐久リレーなど、今年度の本校の地域活動を報告しました。続いて講師を紹介した嶋田吉朗常務理事・校長補佐は、先日の「第19回スイーツ甲子園 高校生パティシエNo.1決定戦 Supported by 貝印」での本校の全国優勝が飯塚のまちでも話題になっていることに触れ、本校がまちの人から「飯塚を盛り上げている学校」と見てもらえるようになってきたと話しました。

さらに、街なか学園祭の当日は飯塚市全体が本校に注目し、日頃の地域活動の集大成として、飯塚高校がまちに何を残せるかが問われる日になると話しました。そして、人口減少など飯塚が抱える難しさにも触れたうえで、生徒が一歩踏み出して未来につながる何かを残せれば、それはまちにとってずっと残るものになり、何かを変えられたという経験は生徒自身にも一生残っていくと語りました。

空き家をつなぎ、地元の暮らしを価値に

株式会社NOTE代表取締役の藤原岳史さん
株式会社NOTE代表取締役の藤原岳史さん

藤原さんはまず、昨年1年間で日本の人口が約91万人減ったという数字を示し、人口減少が地域にもたらす影響から話を始めました。飯塚市でも人口は毎年約600人ずつ減っていて、地域で使われるお金に換算すると、年に8億円ほどがまちから失われている計算になるそうです。

人が減れば空き家や閉じた店舗が増えていきます。それと一緒に、その土地で受け継がれてきた暮らしや文化、地元への誇りも消えていくおそれがあると藤原さんは指摘しました。

その課題に向き合う取り組みとして紹介されたのが、株式会社NOTEが全国で展開する「NIPPONIA」です。古民家をはじめとする歴史ある建物や、まちの空き家・空き店舗を再生し、その土地ならではの暮らしや文化を未来へつないでいくことを掲げています。

その一つである兵庫県丹波篠山市の城下町では、まちに点在する空き家を店舗や客室に再生し、まち全体を一つのホテルとして運営することで、宿泊客がまちを歩き回る流れが生まれています。藤原さんは、一軒だけ再生してもまちはなかなか変わらないとして、取り組みを「点」から「面」へ広げていくことの大切さを語りました。

講演で特に強調されたのが、その土地の「生業(なりわい)」を価値として伝えるという考え方です。職人の仕事や酒蔵、田植えや稲刈り、地域の祭りなど、地元の人には見慣れた日常が、外から訪れる人にとっては特別な体験になります。藤原さんは、よその観光地を真似れば競争になるけれど、飯塚にしかないもので勝負すれば競う相手はいないと話しました。

飯塚で描く未来の地図

藤原さんは、高校生にもすぐに始められることとして、「5年後、50年後、100年後にどんなまちにしたいか」を地図や写真を使って具体的に描くことを提案しました。講演では、飯塚に当てはめた例もいくつか紹介されました。

  • 商店街をウエディングロードにして、買い物に来た人たちが祝福してくれる風景
  • 空き家をパブリックビューイングの会場にして、普段は部活帰りに勉強したり友達と過ごしたりできる居場所にすること
  • スイーツ甲子園で優勝した生徒が、人通りの増えた商店街に店を出し、自分のスイーツを多くの人に味わってもらうこと
  • 飯塚を訪れた外国人に、授業で習った英語で話しかけてみること

藤原さんは、マルシェやコンサートなどのイベントも、ただ開くだけでは未来が見えず、「5年後にこうなるため」という目的を持って行うことが大切だと説明しました。たとえばマルシェなら、公園などに集めず、空き家の前を借りてまちの中にわざと散らすことで、人が商店街を回遊するようになるといいます。

商店街全体を舞台にする街なか学園祭も、まさにこの考え方と重なると藤原さんは話しました。街なか学園祭は年に一度、飯塚高校の生徒が力を合わせて開く行事です。藤原さんは、残りの364日にまちづくりに関わるほかの人たちが同じ将来像のもとで取り組みを重ね、それが毎日のようにつながっていけば、まち全体が一つのホテルのようになっていくと話しました。

生徒の声を11月の街なか学園祭へ

地域活動特別講演会

講演中に生徒が回答したアンケートでは、飯塚市の商店街の印象として「シャッターが多くて寂しい」「行く理由があまりない」が80%を占めました。一方で、商店街に残したい宝物として古い建物やアーケードを挙げた生徒は62%、人情味のある店主さんや地元の人たちを挙げた生徒は33%に上りました。

結果を受けて嶋田常務理事は、生徒が商店街と関わっていく中で、行く理由は必ず見つかってくるはずだと話しました。古い建物は取り壊されてしまうことも多いけれど、高校生が「面白い」「イケてる」と発信すれば、まちの見方も変わっていくと期待を寄せました。

「お客さんとして商店街のお店を楽しみたい」という回答が74%に上ったことには、商店街の方々が聞けばきっと喜ぶ声だと話しました。実際に、商店街では最近カフェが少しずつ増えていて、本校が学園祭で使った空き店舗に新しい店が入ったことも紹介されました。

藤原さんは学園祭に向けて、自分だったらどんな店がほしいか、こんな店があるまちならいいなと考えながら企画してほしいと生徒に呼びかけました。さらに、空き店舗の再生プロジェクトに参加してみたいと答えた生徒が18%いたことには「意外と多い」と目を留め、プロと一緒に建物を直せば、漆喰の塗り方や建物の構造まで学べると話しました。

嶋田常務理事も、楽しむことを大切にしながら、自分たちが楽しいだけで終わらせず、来てくれた人に何を届けられるかを考えてほしいと語りました。日頃から飯塚で過ごし、まちの人とつながっている高校生が学園祭を重ねていけば、飯塚のファンは必ず増えていくはずだと期待を寄せました。

生徒からの花束贈呈

閉会にあたり、生徒会代表は、地域にずっと寄り添い、盛り上げ続けるNIPPONIAの取り組みに感銘を受けたと述べました。また、「当たり前の日常を体験にする」という考え方は本校のGLIのLocalとも重なり、学園祭をはじめとする地域活動を通して、継続的に価値を生み出していく大切さを実感したと伝えました。

11月21日(土)の街なか学園祭に向けて、生徒たちはこの講演で得た視点を手がかりに、飯塚のまちに何を残せるかを考えながら準備を進めていきます。