3人で描いた夢のケーキが日本一に。製菓部「Zero」スイーツ甲子園優勝報告

飯塚高校製菓部の長﨑斗亜さん、渡辺紡未さん、渡部一花さんによるチーム「Zero(ゼロ)」が、9月27日(日)に東京都世田谷区の日本菓子専門学校で開催された「第19回スイーツ甲子園 高校生パティシエNo.1決定戦 Supported by 貝印」の全国大会決勝で優勝し、文部科学大臣賞を受賞しました。あわせて貝印賞にも選ばれています。本校製菓部の全国制覇は2年ぶり4度目です。
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今回はZeroの3名と製菓部顧問の林田英二先生に、作品に込めた思いや、約8か月にわたる優勝までの取り組みについて話を聞きました。
眠る女の子が見る、パティシエになった3人の夢

今年の大会テーマは「バースデーケーキ」でした。Zeroが仕上げた「My Birthday Dream」は、ケーキの中央で眠る女の子が、夢の中でパティシエになった3人の姿を思い描いている情景を表現しています。まず一人ひとりが案を考え、それを持ち寄って話し合いながら、3人で一つの作品にまとめていきました。
味の主役はチーズムースです。中心にはライチとカシスの層を重ね、リンゴのコンポートでフレッシュ感を加えました。食べたときに楽しめるよう、生地の上にはサクサクとしたフィアンティーヌを敷き、パフをホワイトチョコレートで包んだシリアルチョコも入れて、食感に変化をつけています。
飯塚市役所への表敬訪問などで、作品を試食した方々からは「甘すぎず、酸味とのバランスがちょうどいい」という感想が多く寄せられたそうです。
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昨年と同じ3人で、2月から始まった挑戦

3人は昨年も同じメンバーでスイーツ甲子園に出場しています。今年の出場メンバーを決める際に製菓部の同学年で話し合い、再びこの3人で挑むことになりました。
準備は2月のチーム結成から始まりました。大会テーマがまだ発表されていない春休みには、林田先生が仮のテーマを設定し、ケーキ作りを重ねました。正式テーマの発表後、それまでの試作から生かせるものと変えるべきものを見極めながら、作品を練り上げていきました。6月上旬に書類を提出し、7月上旬に書類審査を通過したあと、8月6日に東京で行われた西日本大会に臨みました。
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西日本大会では、飾りが好評だった一方で、味に課題が残ったといいます。「全国に行くまでは味の試作をたくさんして、そこが苦労しました」と渡辺さんは振り返ります。全国大会までの約1か月半、3人は試作を繰り返し、甘さと酸味のバランスを突き詰めていきました。
同学年の西田玲亜さんも、サポートメンバーとして3人の挑戦を支えました。長﨑さんは「準備や片付けを手伝ってくれたり、プレゼンテーション時のボードを作ってくれたりしました」と、感謝を込めて話していました。
誰が担当してもできる体制と、本番への入念な備え
全国大会では、渡部さんが土台や周りの生地とマカロンを、渡辺さんがセンターにあるライチとカシスの層を、長﨑さんがリンゴとチーズムースの層を担当しました。
分担の決め方について、長﨑さんは「誰がやっても同じようにできるようにしていて、その中で時間帯や工程の相性を考えて、この割り振りにしています」と説明します。3人全員がどの工程もこなせることを前提に、限られた時間の中で動きがかみ合う配置を選んでいました。
本番で想定外のことが起きたときは、3人でコミュニケーションを取り、全員で納得した方法で対処すると決めていました。渡部さんは「目を合わせて、失敗したことを周りに気づかれないようにカバーしていました」と話します。さらに大会前には、起こり得るトラブルとその対応策をすべて書き出した「まとめノート」を作りました。渡辺さんは「その通りにみんなでやっていけば、無事に完成までもっていけると思っていました」と、ノートが心の支えになっていたことを明かしました。
全国大会の会場には、審査員や取材陣、見学者が大勢集まり、通るのに苦労するほどだったといいます。普段の実習室とはまるで違う環境でしたが、3人は落ち着いて制作を進めました。長﨑さんは「問題に対する準備をしておけば、不安になることも焦ることもなく本番を終えられる」と実感したそうです。今回いちばん学んだのは準備の大切さだったと語ってくれました。
練習を重ねて合わせた動き。林田先生が見たチームの強み

渡辺さんにとって、3人で一つの作品を作り上げる経験は特別なものでした。「部活でもチームですることはそんなになくて、相手の動きを見ながら作業したり、時間を合わせたりするのが難しかった」と言います。それでも、練習を重ねるうちに3人の動きが合うようになり、それが優勝につながったと振り返ります。渡部さんも「大変なことがあっても、諦めずに努力したらいい結果になると学びました」と、続けることの大切さを口にしました。
林田先生は、チームの一番の強みとして、毎日欠かさず学校に来て練習を積み重ねられたことを挙げます。体調を崩すこともほとんどなく、1日も無駄にしなかったといいます。「ただやるだけではなく、主体的に取り組めたことが今回の勝利につながったと思います。一つひとつを確実にやれていて、もう一段階上のチームになれたのではないでしょうか」と、昨年から同じメンバーで挑戦を続けてきた3人の成長をたたえました。
次はタヒチ研修、伊勢丹新宿でのメニュー開発へ

優勝チームには副賞としてタヒチへの研修旅行が用意されています。また、貝印賞の受賞により、伊勢丹新宿店「Kitchen Stage」でオリジナルメニューを開発する機会も得ました。いずれも今年度中に実施される予定です。
タヒチで学びたいことを尋ねると、3人はそれぞれ答えてくれました。日本では見られない植物やカカオ、気候や環境の違いから生まれる菓子の技術などです。長﨑さんは「お菓子作りの方法だけでなく、原材料から詳しく知りたい」と意欲を見せます。
メニュー開発については、長﨑さんが「スイーツ甲子園で培った力で、創造力あふれるお菓子を作りたい」と話しました。渡部さんは、普段とは違う形のスイーツに新しいアイデアで挑みたいと考えています。渡辺さんは「コラボ先の方と話し合って、自分たちのアイデアがしっかり生かされた商品を作りたい」と話し、3人の目はすでに次の舞台に向いています。
林田先生は、3人の今後に向けてこう語りました。「スイーツ甲子園優勝は一つの通過点です。お店に入ったり専門学校に進んだりしても、地道に一歩一歩、毎日積み重ねることを続けてほしいと思っています」
ケーキの中で眠る女の子が見ていたのは、パティシエになった3人の姿でした。その夢を現実にするための挑戦が、ここから始まります。

